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ロートレックの衝撃

2018年01月11日

「saちゃんから展覧会のチケットもらったけど、行く?」とnabeさんが言った時、わたしの耳に「ロートレック」という言葉が飛び込んだ。
即座に「行きたい」と即答すると、nabeさんはびっくりしていた。絵画にはとんと興味をもたないわたしが行くとは思わなかったのだ(^-^;。東京駅から徒歩5分ほどの三菱一号館美術館で2017/10/18から2018/1/8まで、「パリ グラフィック ロートレックとアートになった版画・ポスター展」が開催されていた。

実は昔、ロートレックの描いた女性を見て、わたしは心を揺さぶられたことがあった。絵の中の女性が黒い衣装をまとっていたからだろうか。その当時、黒ばかり着ていたわたしは、単純に感動していた。

その、わたしを感動させた絵がやはり、今回の展覧会のポスターの絵になっていた(右が元の絵)。
ロートレックの衝撃ロートレックの衝撃

今回はロートレックの作品だけではなく、19世紀末の版画なども展示されていたが、会場の部屋を次々に回りながら、他の作者とロートレックの作品は、絵画音痴のわたしでさえ、ひと目で区別がついた。輪郭の線の動きや、柔らかく妖艶な肢体、顔、手の形が独特だった。

特にロートレックの「黒」の使い方がわたし好みだった。昔の記憶では、「黒」がもっとくっきりしていたように思っていたが、実際、作品を見ると、結構、淡い黒の作品もあって、意外だった。
ロートレックの衝撃

実は、今回の展覧会で、もうひとつの大きな衝撃を受けた。東京駅の展覧会会場へ向かう電車の中で、ロートレックについて、ネットでいろいろと情報集めをして、ショッキングな事実を目にしたのだ。

わたしの想像していた人物像のロートレックと、実際のロートレックの落差は余りに大きく、ショックだった。
遊び人の貴公子というイメージが、見事にくつがえされて、展覧会のロートレックの作品の前で、絵の素晴らしさと、その絵を描いたロートレックの生きざまを思い計ると、二重、三重の衝撃だった。

ロートレックの生い立ちから、まず説明しよう。
ロートレックの両親は身分の高い貴族でいとこ同士の結婚で、ロートレックは生まれ、幼少時代は「小さな宝石」と呼ばれて、可愛がられた。
弟が亡くなったことが転機だったのか、それとも近親同士の結婚でロートレックが身障者になってしまったことが転機だったのだろうか。

近親同士の結婚のせいで、骨の異常があり、足は13歳で成長が止まり、胴体だけが成長し、足は子供のまま細く短いという不格好な大人になっていた。スマホの画面に現れたロートレックの姿を見つめながら、私の記憶の中のロートレックの作品とロートレックが、余りにかけ離れて、結びつかなかった。
ロートレックの衝撃
※インターネットより拝借

大人になったロートレックは、父から疎まれ、異常なほどの性欲から歓楽街やカフェに入り浸り、気心の知れた女たちを描き続けた。ちょうどパリは世紀末の時代で、デカダン(自堕落)な生活を送るロートレックは時代の寵児そのものだった。
ロートレックの衝撃

ロートレックは36歳という若さで亡くなるが、障害を持つ彼を蔑み、絵を評価してくれなかった父親に対して、死の直前、「馬鹿な年寄りめ!(Le vieux con!)」という言葉を吐いたとは、なんと哀れな終末だったことか。

ロートレックの描く女性たちは、酒場の女たちだが、ロートレックの眼を通して、個性あふれる女性たちが生き生きと描かれている。下の作品の踊り子は、ちょっとけだるそうに開脚しているが、スカートのひだや、足の形に、生命があふれている。特に、ロートレックは足を上げる女性をよく描いている。
ロートレックの衝撃

自身が失って、一生、手にすることができないものを、ロートレックは女性たちの姿の中に見つけ出して、それを描き続けたのかもしれない。
ということは、もしロートレックが普通の貴公子に成長していたら、果たして彼女たちを描き、才能を開花させることができただろうか・・・。

ところで、絵の下に、漢字のような赤や黒のマークがついているが、これがロートレックのサイン。
ロートレックの衝撃

このサインからも、ロートレックが他のこの時代の芸術家同様、浮世絵などの日本芸術に影響を受けたことがわかる。
会場には、浮世絵も展示されていて、結構、存在感が大きく、威光を放っていて、なんだか日本人としてちょっぴり鼻が高かった(^=^)。


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Posted by kamome at 13:30│Comments(0)見る
 
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